Welcome to Michito Tsuruoka's blog. This space is mainly used to announce my new publications.

2016/10/09

NATOにおける核態勢の新展開――ワルシャワ首脳会合コミュニケを読む

鶴岡路人「NATOにおける核態勢の新展開――ワルシャワ首脳会合コミュニケを読む」『NIDSコメンタリー』(防衛研究所)第54号(2016年10月6日)が刊行されました。

2016年7月のNATOワルシャワ首脳会合では、バルト三国およびポーランドへの計約4,000名(4個大隊)の「事実上の」常駐に関する合意が注目されましたが、核抑止に関してNATOとしてどのようなメッセージを発するのかも、関係者の間では重要な論点でした。その背景には、ウクライナ危機以降相次ぐ、ロシアによる核の威嚇(nuclear sabre-rattling)」がありました。それにNATOとしていかに対応できるかが問われていたわけです。

結果として今回は、かなり直截的な表現が使われていまして、ロシアに対する非常に明確なメッセージになっています。「潜在的敵国の計算の複雑化」や、「敵対国に対して耐え難く、またそうした国が期待するであろう利益を大きく上回るコストを負荷」といった文言は、冷戦を彷彿とさせます。ロシアによる核の威嚇をこれ以上放置することはできないという、NATOの強い懸念と決意がうかがわれます。

同時に、NATOが本気になったということは、米国が本気になったということでして、この問題は、日本でもそろそろもう少し真剣に議論しないといけないかもしれません。

NATOワルシャワ首脳会合コミュニケの第53、54パラグラフが、核態勢に関する該当箇所です。両パラグラフは、拙稿文中で全訳していますが、英語の原文はこちらでご覧ください。

PDF:http://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary054.pdf



2016/09/05

欧州における同盟、集団防衛、集団的自衛権(『国際安全保障』寄稿論文)

鶴岡路人「欧州における同盟、集団防衛、集団的自衛権――新たな脅威へのNATO、EUによる対応」国際安全保障学会編『国際安全保障』第44巻、第1号(2016年6月)が刊行されました。

9.11テロを受けたNATOによる北大西洋条約第5条(集団防衛条項)の発動と2015年11月のパリでの連続テロ事件を受けたEUのリスボン条約第42条7項(相互援助条項)の発動を事例に、欧州における集団防衛や集団的自衛権の実践について考えてみました。集団的自衛権に関する欧州と日本の理解の相違は、やはりかなり大きなものがありそうです。

今回は、「同盟関係の現在」という特集号でして、細谷雄一編集主任のもと、日米、米豪、米韓の各同盟に関する興味深い論考が掲載されています。

安全保障学会の会員の皆様には郵送されていますが、会員以外の方は、下記内外出版社のサイトで購入可能です。拙稿については、ご連絡いただければPDFをお送りいたします。目次は下記のとおりです。

内外出版株式会社販売サイト:http://www.naigai-group.co.jp/_2016/06/441.html


【目次】
  • 21世紀の同盟関係――日本の視座から (細谷雄一)
  • 「日米防衛協力のための指針」からみた同盟関係――「指針」の役割の変化を中心として (德地秀士)
  • 米豪同盟と中国――「二重のトレンド」の顕在化 (石原雄介)
  • 米国のアジア太平洋リバランス政策と米韓同盟――21世紀「戦略同盟」の三つの課題 (阪田恭代)
  • 欧州における同盟、集団防衛、集団的自衛権――新たな脅威へのNATO、EUによる対応 (鶴岡路人)

2016/08/28

The NATO vs. East Asian Models of Extended Nuclear Deterrence? (The Asan Forum)

Michito Tsuruoka, 'The NATO vs. East Asian Models of Extended Nuclear Deterrence? Seeking a Synergy beyond Dichotomy', Asan Forum, Vol. 4, No. 3 (May-June 2016) has been published and is available at the Asan Forum website.

URL: http://www.theasanforum.org/the-nato-vs-east-asian-models-of-extended-nuclear-deterrence-seeking-a-synergy-beyond-dichotomy/

The article compares the NATO and East Asian models of extended nuclear deterrence and explores how we can put the two in a more coherent framework of analysis - a spectrum of nuclear burden-sharing is something I wanted to introduce.


韓国のアサン政策研究所が隔月で刊行している英文オンラインジャーナルのAsan Forumに、「The NATO vs. East Asian Models of Extended Nuclear Deterrence? Seeking a Synergy beyond Dichotomy」を寄稿しました。

NATOと東アジア(日米、米韓)における拡大核抑止態勢の間には、当然のことながら大きな差異がありますが、それを踏まえつつも、「核抑止に関するバードン・シェアリング(nuclear burden-sharing)」という視点で、さまざまな具体的要素を一つの軸に入れられるのではないかと考えてみました。本文中にも掲載しましたが、それを簡単に図示すると以下のような感じです。上へいくほど、より深い・重いバードン・シェアリングになります。

核抑止に関するバードン・シェアリングのヒエラルキー



2016/07/31

英国離脱で弱体化の避けられないEU外交

鶴岡路人「英国離脱で弱体化の避けられないEU外交――新たなゲートウェイ探しを迫られる日本」をハフィントン・ポスト日本版ブログ(2016年7月12日)に寄稿しました。

記事URL: http://www.huffingtonpost.jp/michito-tsuruoka/brexit-eu_b_10934750.html


英国の国民投票直後に書いた「EU側から見た英国離脱の衝撃」(2016年6月30日)の続編です。同小文は、その後、7月5日に『朝日新聞』でも紹介していただきました。

英国のEU離脱問題は、日本でもかなり関心の高い状況が続きましたが、そろそろ落ち着いた感じかもしれません。しかしだからこそ、改めて、その背景や今後について検討を深めることが必要なのだと思います。引き続きフォローしなければならないトピックです。

2016/07/02

Europe's potential in addressing maritime security in Asia



It argues that Europe has a potential to play a substantial role in Asia's maritime security. Both Europeans and Asians need to realise Europe's potential.



ブリュッセルのシンクタンクEPC(European Policy Centre)のCommentaryのシリーズに、「アジアの海洋安全保障への対処における欧州の潜在性」と題した小文を寄稿しました。

アジアの安全保障における欧州の役割に関しては、アジア側でも欧州側でも懐疑的な議論が根強いことは事実です。それでも、欧州は実は大きな責任と潜在性を有しているという議論をしてみました。

EU側からみた英国離脱の衝撃

鶴岡路人「EU側からみた英国離脱の衝撃」を、ハフィントン・ポスト日本版のブログ(2016年6月28日)に寄稿しました。

記事URL: http://www.huffingtonpost.jp/michito-tsuruoka/analyze-brexit-from-viewpoint-of-eu_b_10710552.html


6月23日の英国での国民投票におけるEU離脱派の勝利は衝撃的でした。実際に英国がEUから離脱するにはまだ時間がかかりますし、今後の情勢次第では、最終的に離脱しない可能性を含め、紆余曲折が予想されます。

国民投票直後から、日本でも、離脱の決定を導いた英国国内の要因の分析はさまざまになされてきましたが、EU側がどのように捉えているのか、そしてEU内の政治力学にどのような影響を及ぼすことになるのかについては、まだまだ議論が不足しているようです。そこで、EU側からみた英国離脱について小文を書いてみました。

離脱となれば英国にとって大きな変化になるのは当然ですが、もしかしたらEUにとっての変化の方が大きいのかもしれません。それだけ、EUにおける英国は大きな役割を果たしてきた主要国だったのです。

2016/06/07

NATO's Challenges as Seen from Asia (Polish Quarterly of International Affairs)

Michito Tsuruoka, 'NATO's Challenges as Seen from Asia: Is the European Security Landscape Becoming Like Asia?' The Polish Quarterly of International Affairs, Vol. 25, No. 1 (2016) has just been published from PISM (Polish Institute of International Affairs) in Warsaw. It is a NATO summit special issue, compiling a series of articles on NATO, including those by my friends and colleagues.

My argument is simple, as shown in the subtitle of my article, though I did not need to put the question mark. The European security landscape and security challenges in Europe are indeed becoming like Asia. Europe now has to deal with such challenges as change of the status quo by force, hybrid warfare, nuclear intimidation, adversaries' A2AD capability, etc. Asians have been quite familiar with those challenges...

Should you need a PDF of my article, please let me know. More information available below.

http://www.pism.pl/publications/journals/The_Polish_Quarterly_of_International_Affais/2016/1


ポーランド国際問題研究所(PISM)刊行のThe Polish Quarterly of International Affairsの最新号に、小文「アジアから見たNATOの課題――欧州の安全保障環境はアジアに類似してきているのか?」を掲載しました。今回はNATO首脳会合特集号でして、NATO関連の論文が多数掲載されています。目次は下記で見られます。

http://www.pism.pl/publications/journals/The_Polish_Quarterly_of_International_Affais/2016/1

内容は副題のとおりでして、力による現状変更、ハイブリッド戦争(グレーゾーン事態)、核による威嚇、敵対勢力によるA2AD能力の向上等、欧州安全保障の課題は、アジアが以前から悩まされてきた課題に似てきました。だからこそ、欧州とアジアの間で今まで以上に真剣な対話と協力が必要になるわけです。

拙稿のみPDFがありますので、ご入用の方はご連絡くださいませ。


2016/03/27

The Role of the EU and NATO for Japan's Security (KAS Japan Conference)

Konrad Adenauer Stiftung (KAS) Japan office hosted a conference 'The Role of the EU and NATO for Japan's Security' on 9 March in Tokyo, where I gave a talk on NATO-Japan relations. The agenda and selected slides from the conference (including mine) can be found below.

URL: http://www.kas.de/japan/en/events/67274/




(Photos: KAS Japan)

2016/03/26

ブリュッセルでのテロ事件(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」)

3月22日にブリュッセルで発生した連続テロ事件を受けて、3月23日のTBSラジオ「荻上チキ・Session22」に、放送大学教授の高橋和夫先生とともに出演し、議論しました。しばらくの間、下記サイトで聴くことができます。

サイト: http://www.tbsradio.jp/16595
Podcast: http://podcast.tbsradio.jp/ss954/files/20160323main.mp3

(写真:TBSラジオ)

リスボン条約第42条7項

鶴岡路人「リスボン条約第42条7項――パリ同時テロ事件を受けたEUにおける対応」『NIDSコメンタリー』第51号(2016年2月10日)が刊行されました。防衛研究所のサイトからダウンロード可能です。

PDF全文:

リスボン条約(EU条約)第42条7項の「相互支援条項」は、武力侵略発生時の集団防衛を規定した条項です。しかし、発動のための手続きや発動された際の履行についての規定が全くないばかりか、EU条約の規定であるにもかかわらず、EUの役割が条約上は一切存在しないなど、いろいろな意味で特殊な条項です。

この条項が実際に使われる日が来るとも、ほとんど考えられていなかったようですらあります。それだけに、今回の史上初めてとなる発動は、さまざまに検討する必要があるのでしょう。そのための最初の一歩として、現時点で考えられることをまとめてみました。